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サイエンス読み物

観察法のイロハのイ 探し出せば好きになる!土の虫ウオッチング

Science Window 2014年冬号(2014年、7巻5号 通巻53号、32ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 土にはたくさんの生き物がいます。普段は見かけない小さな虫たちも、工夫次第で簡単に観察できます。落ち葉をめくると土の中から飛び出してきたり、目を凝らせば見えたりと、虫を見つけるたびに楽しくなる観察法を、千葉県生物多様性センターの萩野康則先生に教わりました。

土壌動物の観察ポイント
イ 枠を作ってから土を採取する
ロ 白いシートの上に土を薄く広げる
ハ 顕微鏡でのぞいて足や羽に注目する

土や虫は不潔でも危険でもない

― 土の虫を探すときに直接触っても大丈夫なのでしょうか? 達人 ムカデ以外の虫なら、まず大丈夫。手袋をしておけば安心ですね。

― 多くの虫がいる土を採取しやすい場所や時期はありますか?

達人 なるべく人が踏み込んでいないような雑木林をお勧めします。土の上に自然に落ち葉が積もったようなところですね(下の写真)。自然の状態に近いほど多くの虫がいます。時期は雨や乾燥した日が続いていなければいつでも大丈夫です。

人が踏み込んでいない雑木林の土には、たくさんの土の虫がいる。右上の円内の写真はヤスデの仲間の「トラフババヤスデ」で、関東地方のごく限られた地域にしかいない。

土を薄く広げて目を凝らす

― 採取した土を持ち帰ったら、いよいよ観察ですね。
達人 はい。白いビニール製のシートの上にまずは土だけを振るいながら広げてみましょう。なるべく薄くした方が見つけやすいですよ。最初は虫たちがじっとしているので、少し間を置くことがポイントです。とても小さいので目を凝らして探してください。あっ、出てきましたね。ここにも、あそこにも……。

― 採取した土を持ち帰ったら、いよいよ観察ですね。
達人 ピンセットを使ってもいいですが、うまく捕まえられないときは吸虫管という便利なものもあります。捕まえた虫は観察しやすくするためにアルコールに入れていきましょう。

― たくさんの虫が集まりました。
達人 そうですね。たくさんいましたね。土の方を一通り探し終えたら、今度は落ち葉や根っこの方も探してみましょう。まだまだ見つかりますよ。

― 顕微鏡を使うのですか?
達人 土壌動物は小さなものが多いので、体の細かな部分を観察するには実体顕微鏡を使います。アルコールと虫を一緒にシャーレに入れますが、余分なアルコールはスポイトで吸い取っておきましょう。

顕微鏡で見た写真

― 虫の特徴はどこに注目したらいいですか?
達人 はい、足や羽に注目します。足があるかないか、足があれば対で何本あるかを数えてみましょう。

― 虫の名前を知りたいのですが。
達人 虫の体の特徴が分かったら、次は図鑑などで絵合わせをして調べてください。検索円盤図を使うと体の特徴から虫の大まかなグループを簡単に探せます。

― 場所によって虫の種類や数は違いますか?
達人 樹木の多い公園でも、落ち葉を人が掃いているところにはあまりいないこともあります。少なくとも三カ所で採取して、平均値をとると良いでしょう。土の中は分からない生き物がたくさん。だからこそ発見もたくさんあるんですね。

達人:萩野康則(はぎの・やすのり)
1961年生まれ。千葉県生物多様性センター副主幹・千葉県立中央博物館主任上席研究員。エダヒゲムシを専門に研究。著書は『日本産土壌動物』(東海大学出版会・分担執筆)など。

虫の大まかなグループを調べる方法
横浜国立大学名誉教授であり元神奈川県立生命の星・地球博物館館長の青木淳一先生が作成した、土の虫の分類表を下記のウェブサイトに掲載しています。
JT生命誌研究館「ササラダニの分類から学んだ自然」
https://www.brh.co.jp/s_library/j_site/scientistweb_old/no41/index.html

 ここに掲載する記事は『サイエンスウィンドウ』掲載当時のものですので、所属等は変更になっている場合があります。

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