共に生きる「コナラ、ベニタケ、ギンリョウソウ」
地球を彩る多様な生物。それぞれの生物は、複雑なつながりの中で生きている。特に密接なかかわり合いを見せるのが、共生といわれる現象。生物が織りなす、共生の世界をシリーズで紹介する。
コナラとギンリョウソウは植物、ベニタケは菌類だ。ベニタケは普段は土の中で菌糸の状態だが、時期が来るとキノコ(子実体)を作る。菌糸1本はとても細く、髪の毛の100 分の1ほどの太さだ。
植物の根に菌が付いて特有の構造をつくったものを「菌根」と言う。顕微鏡で断面を見ると、根の周りを取り囲むように菌が付いている。
イラストではコナラの菌根とギンリョウソウの根がベニタケの菌糸でつながっている。「これらは、お互いに栄養分のやりとりをしているのです」と話すのは、菌類と植物など、異種生物間の相互作用の研究が専門の岩瀬剛二さん。
ベニタケは土中に菌糸を伸ばして、リン酸や窒素などの養分を吸収しており、コナラは菌根を通してこれらの栄養分をもらっている。菌が付いていない樹木の多くは栄養が十分に取れずに枯れてしまい、育つことができないという。
一方、ベニタケは光合成によって作れる炭水化物をコナラからもらう。樹木と菌にはこのような共生の組み合わせが他にもあり、アカマツとマツタケなどもそのような例だ。
ギンリョウソウは、植物だが葉緑素を持たないため光合成ができない。ベニタケからコナラの作った炭水化物などの栄養をもらって生きている。
一方ベニタケに何もメリットがないかどうかは良くわかっていない、と岩瀬さんは言う。「ギンリョウソウが枯れた後に、その栄養分を吸収しているのではないかとも考えられますが、確かめられていません」。
多年草だが、花が終わると地上部は枯れてその場で溶けてしまうというギリョウソウ。そのとき種子も一緒に流れ出ると考えられ、「あたり一面がギンリョウソウというような大群落が見られるのは、この変わった種子散布のためかもしれませんね」と岩瀬さんは話す。
取材協力:帝京科学大学生命環境学部教授 岩瀬剛二
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