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サイエンス読み物

共に生きる「シュンランとラン菌」

Science Window 2014年冬号(2014年、7巻5号 通巻53号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 地球を彩る多様な生物。それぞれの生物は、複雑なつながりの中で生きている。特に密接なかかわり合いを見せるのが、共生といわれる現象。生物が織りなす、共生の世界をシリーズで紹介する。

 ランは世界に約3万種もあると推測され、そのうち約250種が日本で自生している。ランの仲間には、人工栽培によって育てられているものもある。

 毎年2~4月ごろに、緑がかった花を開くシュンランは、北海道南部から九州までの広い地域に分布。落葉樹が多く、日がよく当たる雑木林に生え、低地の里山や海岸沿いにも見られるが、人工栽培が難しいという。

 長年ランの研究をしている東北大学の鳥山欽哉先生によると、シュンランは自分で土から栄養を吸収する力が弱い。それに代わって役割を果たすのが、根の細胞の中に入り込んだラン菌だ。土から栄養分を取り込み、シュンランの根に栄養を行き渡らせる。それによってシュンランは成長できる。古くなって死滅したラン菌も、シュンランの根の細胞によって吸収され、これも栄養になる。

 一方のラン菌は、シュンランの細胞から栄養となる糖分を得ることで増殖が可能になる。この糖分によって、新しくできた根の先まで、増殖を繰り返せるのだ。顕微鏡で根の細胞をのぞいてみると、隣り合った細胞の中に、新しく成長しているラン菌〔細胞(1)〕、増殖して密になった状態のラン菌〔細胞(2)〕、死滅したラン菌〔細胞(3)〕を観察することができる。

 ラン菌の力を借りて成長するシュンラン。そのシュンランから栄養をもらうことによって増殖するラン菌。「森の中でランは菌でつながっています。根はつながっていなくとも、菌糸がつながって一つの森を作っているのです。そしてランに限らず、陸上植物の9割が菌と共生しているのです」と鳥山先生。地面の下に展開する壮大な共生のさまを想像させられる。

 取材協力:東北大学大学院農学研究科教授 鳥山欽哉

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