レベル
サイエンス読み物

共に生きる「ベニヒモイソギンチャクとソメンヤドカリ」

Science Window 2013年夏号(2013年、7巻2号 通巻50号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 地球を彩る多様な生物。それぞれの生物は、複雑なつながりの中で生きている。特に密接なかかわり合いを見せるのが、共生といわれる現象。生物が織りなす、共生の世界をシリーズで紹介する。

 イソギンチャクは、柔らかい体に毒を持つ。世界2000種のうち100種ほどのイソギンチャクは、ヤドカリに付着しているという。「ヤドカリと一緒に移動するため、イソギンチャクには、餌を得やすくなるメリットがあります」と話すのは、イソギンチャクを研究する柳研介さん。

 一方のヤドカリは、体を守る貝殻を背負う。イラストに登場するソメンヤドカリは、「水深10メートル付近に生息していることが多く、南日本沿岸で普通に見られます」とヤドカリを研究する奥野淳兒(じゅんじ)さん。このヤドカリの天敵は主にタコ。だが、体に毒を持つベニヒモイソギンチャクと共生していれば、タコには襲われない。ヤドカリにとって、イソギンチャクを背負うことは重そうだが、タコから逃れて生き残りやすくなる。

 脱皮を繰り返して成長するヤドカリは、そのたびに体の大きさに合う新しい貝殻に引っ越す。驚くことに、元の貝殻にいたイソギンチャクも、抱えるように運んで「同居」を続ける。

 この2種の共生がどう始まったのか。「たまたまイソギンチャクが付いた貝殻を背負ったヤドカリが、生き残りやすかったのでしょう。イソギンチャクも、ヤドカリに背負われることを前提とした生活に変化していったのかもしれませんね」と、柳さんは想像する。続けて、「共生しているとはいっても、ヤドカリがイソギンチャクを食べてしまうこともあります。ヤドカリは怖いパートナーなのかもしれません」と、決して共存共栄ではない、自然界の共生の厳しさを語る。

 取材協力:千葉県立中央博物館分館 海の博物館 主任上席研究員 柳研介・主任上席研究員 奥野淳兒

関連リンク

一覧に戻る