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サイエンス読み物

似姿違質「アオダイショウ VS エラブウミヘビ」

Science Window 2013年冬号(2012年、6巻4号 通巻48号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 肢(あし)のない爬虫類(はちゅうるい)といえばヘビである。その姿が何とも苦手という人も多いが人の好みはさておき、ヘビとはいったいどんな動物だろう。

 そもそも爬虫類は両生類から陸生に進化したグループだ。ヘビが出現したのは1億3000万年以上前といわれている。現在世界に3千種近く、日本には39 種の陸生のヘビと8種のウミヘビが分布する。

 私たちに一番馴染(なじ)みのヘビといえばアオダイショウ(青大将)。南西諸島を除く日本中の田畑、森、人家にすみ、ネズミやトリを捕食するが毒はない。外気温の低い冬には体温が下がり、10度以下になると冬眠する。春に交尾をして7〜8月に卵を産み、9〜10月に卵がかえる。幼蛇(ようだ)は脱皮を繰り返しながら4年ほどで成熟するが、その後も少しずつ大きくなる陸生のヘビである。

 海の中にもヘビはいる。ウミヘビと名の付く魚類もいるが、爬虫類のウミヘビは、陸生のヘビから再び海に生息域を求めて進化したヘビである。ここではエラブウミヘビ(永良部海蛇)を紹介する。

 先祖は陸生のコブラ。(財)日本蛇族学術研究所の森口一研究員は、「エラブウミヘビにもコブラ同様の毒があり、捕食する魚を弱らせるために活用しているのでは」と推測する。年間を通して海水温の高い南方の海にすむ。魚類と違ってエラはなく、肺呼吸のため時々海面に上がって呼吸をする。産卵時には陸に上がり、岩陰などに卵を生みつける。卵は陸生のヘビ同様、羊水を含む羊膜(ようまく)と殻(から)に包まれている。

 減反(げんたん)政策や里山の環境変化の影響からか、ここ数十年で日本のヘビの生息数は激減している。「好き嫌いはともかく、ヘビは生態系を構成する大切な仲間の一つ。もし、ホタルやトンボの存在を大切に思うなら、ヘビの生息環境のことも考えてくださいね」と森口さん。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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