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サイエンス読み物

似姿違質「ニホンイシガメ VS ニホンスッポン」

Science Window 2010年初夏号(2010年、4巻3号 通巻34号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 2億年以上もの長い年月、その姿をほとんど変えずに子孫をつないできたカメ。同じ爬虫類(はちゅうるい)で、すでに絶滅した恐竜などを思うと、有力な攻撃手段を持たないカメが、生き抜いてきたことが不思議に思える。

 その鍵は、背中とおなかに備えた甲羅(こうら)にある。硬(かた)い甲羅を“楯(たて)”にした、守りに徹した生き方が、今日までカメを存在させた、大きな理由と考えられている。

 河川(かせん)や湖沼(こしょう)から少し離れた岩場などで日なたぼっこ(殺菌など甲羅の手入れ)をしているカメを見かけることがある。まさに“甲羅干し”の光景だが、日本で見られるカメの大半はクサガメかイシガメ。ここで紹介するイシガメは、水場(淡水)を好む陸亀の仲間で、草、小ザリガニ、昆虫やミミズなどを食べる。本州、四国、九州に広く分布する、日本の固有種だ。

 イシガメよりさらに、水中生活(淡水)に適応したカメの仲間にスッポンがいる。食用として養殖されているが、本州以南の河川や湖沼に広く分布する天然のニホンスッポンを見つけるのは、それほど難しくない。スッポンは、泳いで移動することが多いため、水かきが発達している。

 イシガメとの一番の違いは甲羅である。硬い甲羅を持たず、背中とおなかを覆うのは厚めの皮膚。水底の泥(どろ)や砂利(じゃり)の中に隠れたり、素早く泳いで獲物を捕るのに好都合なのだろう。スッポンも雑食だが、エビや小魚が好物で、より肉食に近い。

 爬虫類の生態を図鑑などで伝えている三上昇さんは、「カメはのろいと言われますが、意外に俊敏です。大切に育てれば100年以上生きるので、彼らの特徴や好みをよく知って、親子三代で育ててください」と話す。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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