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サイエンス読み物

似姿違質「スダジイ VS コナラ」

Science Window 2009年秋号(2009年、3巻4号 通巻28号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 野山が赤や黄色に染まる秋、子どもたちの楽しみといえば何といってもどんぐり拾いだ。どんぐり(団栗)とは、広い意味でブナ科の木の実の総称で、カシやナラ、シイなどの果実のこと。「どんぐりの背比(せいくら)べ」という諺(ことわざ)があるように、一見どの種類も似ているが、よく観察するとそれぞれに個性があっておもしろい。

 リスやノネズミのどんぐり好きは知られているが、私たち人間が生で食べられるどんぐりの種類は少ない。その中で、人間も果実がおいしく食べられる「スダジイ」と、生では食べられない「コナラ」をここでは紹介する。どちらも身近な雑木林や公園、神社などで見られる樹木である。

 スダジイは、1 年中葉をつける常緑樹。日本では東北地方の南部から九州の屋久島まで分布する。初夏に花を咲かせて結実(けつじつ)後、果実は全身を包む殻(から)に守られながらゆっくり成長し、翌年の秋にその殻を破り、こげ茶色に熟れた姿で顔を出す。「僕らの子どものころは、シイの実拾いは秋の日課でした。薄く油をひきフライパンで炒(い)るとさらにおいしい」と、国立科学博物館名誉研究員の八田洋章先生は話す。

 一方、コナラは秋に葉を落とす落葉樹。日本に広く分布する、雑木林の主役である。春に花を咲かせ、結実後は速やかに成長し、その年の秋には、お椀(わん)のような殻をつけた果実が薄茶色に熟れる。

 「私たち人間には、コナラをはじめ多くのどんぐりに含まれる、渋味や苦(にが)味の成分(タンニン)が強過ぎて、何度もあく抜きをしないと食べられません。でも、丁寧に調理をすれば、お汁粉(しるこ)やお団子などで楽しめますよ」と、八田先生。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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