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サイエンス読み物
似姿違質「雄株から出るフキノトウ VS 雌株から出るフキノトウ」
掲載日
2024.06.01
里山に蕗(ふき)の薹(とう)が顔を出すと春は近い。フキは日本で古くから食用などで親しまれてきた山野草である。ほろ苦いフキノトウはフキの若い花茎(かけい)で、天ぷらやフキ味噌などに、また、花の後に出てくる葉の葉柄(ようへい)は、煮つけや味噌汁の具などでなじみがある。
フキはキク科の多年草で、中国やサハリンなどの東洋にも広く分布する。多くのキク科の植物は雌雄(しゆう)同株だが、フキはなぜか雄(おす)と雌(めす)が別株だ。国立科学博物館名誉研究員の小山博滋先生は、「元は同株だった雌雄が何かの理由で別株になったと考えるのが自然でしょう」と話す。
花の穂は、雌雄ともに小花(しょうか)が密集した頭花(とうか)が数十個集まって構成され、薄緑色の苞葉(ほうよう)に包まれている。雄株(おかぶ)の小花は筒状で、花粉を作り、蜜を持つ。雌株(めかぶ)の小花は糸状で、メシベのみであるが、なかには筒状のものもあり、そこに蜜を持ち、虫を誘う。雌株の花茎は、受粉後背丈を伸ばし、タンポポのような綿毛をつけたタネを実らせる。
繁殖方法は、地下茎から毎年多数の花芽(かが)と葉芽(ようが)を出す方法と、結実(けつじつ)したタネを風に運ばせて、着地した所で発芽する方法との2通り。
一般に雌雄の区別なく食べられているフキノトウだが、味の差は? 「私には分かりません。意識して味わってみてください」と、小山先生。
【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。
関連リンク
- Webマガジン|Science Window2009年03月号「特集 人はなぜメタボになるのか」
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