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サイエンス読み物

似姿違質「ダイサギ VS タンチョウ」

Science Window 2009年02月号(2008年、2巻11号 通巻23号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 冬の北海道に、タンチョウ(丹頂)を目の前で見ることができる場所がある。現在タンチョウは、道東の湿原に留鳥として生息しているが、自然の餌が不足する冬場に、彼らが必ず訪れる人工給餌(きゅうじ)場がそれである。

 本来ツルは渡り鳥。今も中国大陸のタンチョウは、冬、南へ渡る。日本のタンチョウも、昔は北海道全域の湿原で子育てし、冬は餌を求めて本州に渡っていたという。明治以降の乱獲や土地開発で、一時は絶滅したと思われていた。ところが大正時代に釧路湿原で数羽のタンチョウが確認され、これらを保護し、冬に給餌を続けたことで留鳥として定着し、個体数も増えたのだ。

 一方、シラサギとも呼ばれるサギ類は、日本にはコサギ、チュウサギ、ダイサギの3種がいる。渡りのメカニズムは複雑で、「冬に日本にいるダイサギには、北の大陸から渡ってきた個体と、夏から居座っている個体がいるようです」と、筑波大学・藤岡正博准教授は言う。60年代には減少したサギ類だが、「現在は、農薬の使用制限で、餌の川魚が死ぬことが少なくなり、減少の心配はない」とのこと。

 釧路で生まれ育ったという阿寒国際ツルセンター解説員の太田幸さんは、「今は人が、タンチョウやサギと共に生きる最良な道を探らなければならない時代なんです」と、話す。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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