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サイエンス読み物

似姿違質「ヤブツバキ VS サザンカ」

Science Window 2008年12月号(2008年、2巻9号 通巻21号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 「さざんか、さざんか咲いた道、たき火だたき火だ落ち葉たき〜」と、童謡に歌われるサザンカ(山茶花)は、落ち葉の豊富な晩秋に気温の下降を感知して北から咲いていく。一方ツバキ(椿)は、早春に気温の上昇を感知して、桜前線のように南から咲く。

 東南アジア原産のツバキ科は、葉を飲み物にする「茶」と、種子を食用油や化粧油の原料にする「ツバキやサザンカ」の大きく2つに分かれる。ヤブツバキとサザンカのグループは、分布域を北へ広げながら姿を変え、青森県まで到達したのがヤブツバキで、山口県萩市を北限とするのがサザンカ。どちらも日本固有の野生種で、外見上の大きな違いは、赤と白の花の色。また花首から散るのがツバキで、花弁が一枚一枚離れて散るのがサザンカだ。

 海外でも人気の園芸種は合わせて6千種を超え、中にはツバキともサザンカとも区別し難い品種もある。

 サザンカを40年研究している箱田直紀・元東京農工大学教授は、「近縁とはいえない両者の人為的交配はまだ成功していないんです」と話す。

 「でも不思議と、天然の交雑種はたくさん見つかり、それをもとに育種をすると品種が定着します。自然界の条件下では、交雑のチャンスを得る個体数の規模が壮大で、長い年月のなかで成功例が出るのでしょう」

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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