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サイエンス読み物

似姿違質「ナナフシ VS 小枝」

Science Window 2008年11月号(2008年、2巻8号 通巻20号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 こずえを1本継ぎ足したように、木の枝にじっと止まるナナフシ。サクラやキイチゴの葉を食草とするおとなしい彼らが、鳥やクモ、肉食昆虫など、天敵だらけの雑木林で生き延びるために備えたのは、枝そっくりな自身の姿。「このような生き物の戦略を隠ぺい的擬態(ぎたい)といい、周りの何かに似ることで天敵から身を隠しているのです」と、話すのは、昆虫研究會・なごや代表の岡田正哉さん。

 たくさんの節がある昆虫ナナフシは、「竹節虫」(七節)と書き、国内では19種類ほど確認されているが、種によって生態が異なる。ここでは、本州以南(南西諸島を除く)でよく見られる、ナナフシモドキを紹介する。

 ナナフシモドキはほとんどがメス。交尾をせずに卵を産む、単為生殖という繁殖方法を採っている。「これまでに数匹のオスが確認されましたが、繁殖には至りませんでした」と岡田さん。他種には、交尾によって繁殖する両性生殖のナナフシもある。「単為生殖なら子はみんな親のコピーかと思いますよね。でも体色が緑や茶など、多様なものが生まれます。ごくまれに、オスも生まれるから不思議です」と、岡田さんは首を傾げる。

 「ナナフシは標本などが少なく、研究は進んでいません。知るほどに、どんどん不思議なことに出合います。ナナフシを観察してみませんか?」

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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