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サイエンス読み物

似姿違質「マサバ VS ゴマサバ」

Science Window 2008年10月号(2008年、2巻7号 通巻19号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 「秋鯖は嫁に食わすな」。こんなことわざもあるほど、栄養を蓄えた秋のサバはまるまると太っていておいしい。だが、これはマサバ(真鯖)に限った話で、ゴマサバ(胡麻鯖)の味は一年を通してあまり変わらないようだ。マサバの味はゴマサバより格上とされているが、春から初夏の産卵後にいったん痩(や)せるマサバに比べて、夏場はゴマサバの方がおいしいと言う人もいる。

 両者の姿はよく似ているが、サケでいえばベニザケとギンザケのように種が違う。「種が異なれば味も違うのでしょう」と話すのは、大阪市立自然史博物館学芸員の波戸岡清峰さん。見分け方は、腹部に和名の由来でもある小斑点があればゴマサバ。小斑点がなく、尾が黄色いのがマサバ。さらに背びれを立てたとき、中の棘(とげ)が9〜10本ならマサバで、11本以上あるとゴマサバだ。

 マサバは、日本でとられた個体に基づき学名がつけられたが、太平洋やインド洋の暖海にも広く分布する。日本では水温14〜18度の比較的沿岸で捕れることが多い。ゴマサバはマサバより南に分布が偏り、水温19〜25度の沖合でよく捕れる。

 「最近、マサバが少なくなり、ゴマサバがたくさん捕れるようになったと漁師さんから聞きます。水温の上昇などで、従来の生息場所の環境が変わったのでしょうか」と、波戸岡さん。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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