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サイエンス読み物

似姿違質「アシカ VS アザラシ」

Science Window 2008年09月号(2008年、2巻6号 通巻18号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 一時人気者になったタマちゃんはオホーツク海北部に生息するアゴヒゲアザラシ。ここでは日本近海でも見られるアシカ科のキタオットセイとアザラシ科のゴマフアザラシを紹介する。どちらも鰭脚類(ききゃくるい)で、大昔にクマのような動物が水中生活に適応し、足が鰭(ひれ)のように変化した、という説が有力だ。大半は水中で生活する彼らだが、交尾、出産、授乳などの繁殖活動を陸上で行うのは、陸上哺乳動物だった名残のようだ。

 キタオットセイの家族形態は一夫多妻で、1頭の大きな雄がたくさんの雌を囲ってハーレムを作る。ゴマフアザラシは一般的に一夫一妻。春、流氷上にクリーム色の一子(いっし)を出産する。

 どちらもタラ、ホッケ、タコなど、主に魚類を捕食するが、彼らの天敵は特に子どもを襲うシャチ。

 だが一番深刻な相手は実はヒト?「漁網に絡まったり、毛皮需要で乱獲されたり。今心配なのは、サハリンの油田開発工事やタンカーの原油流出事故で彼らの生息環境が破壊される可能性があることです」と話すのは稚内在住の水野文子獣医師。

 「アシカもオットセイも芸を披露したりする水族館の人気者。でも本来は自然の中で伸び伸び生きる野生動物です。彼らの姿を一度見に来てください。大自然の本当の大切さが分かっていただけると思いますよ」

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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