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サイエンス読み物

似姿違質「アカハライモリ VS ニホンヤモリ」

Science Window 2008年08月号(2008年、2巻5号 通巻17号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 腹ばい姿勢でミニ恐竜のようなイモリとヤモリ。肉食で変温動物、体内受精をするなどと共通点も多く、名前も似ている。ところが、イモリは両生類、ヤモリは爬(は)虫類だ。

 両生類は、水陸両方の環境を必要とする生物で、幼生期は水中でエラ呼吸をするが、成体に変態して体つきが変わると陸上生活に対応し、肺呼吸や皮膚呼吸になる。皮膚は、水分が蒸発しやすく乾燥をきらう。爬虫類は、主に陸環境に生息し、肺呼吸。皮膚はうろこにおおわれ、水を通さないので乾燥には比較的強い。

 世界ではイモリ科は61種、ヤモリ科は約930種が知られるが、絵では日本でよく見られるアカハライモリとニホンヤモリを紹介した。

 池や水田でよく見かけるイモリは、ミミズなどの小動物を捕食し、名の由来は井戸を守るということから「井守」と書く。ヤモリは陸上の人家やその周辺などに生息し、クモやガなどの昆虫類を捕食するので、家屋を守るといわれ「守宮」と書く。

 「両者の進化を探る重要なポイントは生殖活動」と話すのは両生類の進化が専門の松井正文・京都大学教授。「魚や両生類の卵は裸なので水中に産まないと干からびます。でも爬虫類とそれ以降に進化した動物の卵は、羊水を含む羊膜(ようまく)と殻(から)に包まれているので、陸上生活が可能になったのです」。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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