レベル
サイエンス読み物

似姿違質「イエコウモリ VS ムササビ」

Science Window 2008年07月号(2008年、2巻4号 通巻16号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 コウモリとムササビは、どちらも夜行性の空飛ぶ哺乳類である。

 コウモリ〔翼手(よくしゅ)目〕は日本に約35種生息し、そのほとんどが大木の穴(樹洞)や洞窟などを昼間の隠れ家にしている。絵のイエコウモリは少し特殊で、天井裏や建物の隙間などを隠れ家にする、人に身近なコウモリだ。翼は、手首から先の手のひらと指の骨が長く伸びてその間に皮膜が発達したもので、鳥のように揚力を得ることができる。通常、数キロメートルは自在に飛ぶ。超音波を利用し、餌となる昆虫を察知して捕食する。

 一方、ムササビ〔 齧歯(げっし)目〕は大型のリスのようだが、いざ滑空!と手足を広げると、脇腹の皮膜がマントのように風を受け、1回の滑空で約50メートルは飛べる。あくまでも上から下への移動で、行動半径はせいぜい100〜200メートル。滑空は、地上にいるイタチなどの天敵に遭わずに、樹洞の巣から餌場の森へ移動する手段なのだ。草食で、木の芽、花、実などが豊富な鎮守の杜や森林でよく見かける。

 イエコウモリが増えているといわれるが、奈良教育大学の前田喜四雄教授は、「私に言わせると、一時期減ったものが、農薬散布が少なくなり昆虫が増えてきたことなどで、生息数が回復しただけ。その他のコウモリやムササビは、森が減り、樹洞が減り、分布域は狭まっていますよ」と話す。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

関連リンク

一覧に戻る