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サイエンス読み物

似姿違質「ミスジマイマイ VS ナメクジ」

Science Window 2008年06月号(2008年、2巻3号 通巻15号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 カタツムリは、陸で生活する巻貝の一般的な呼称。海水や淡水にすむ巻貝はえら呼吸だが、カタツムリは肺を持つため陸上で肺呼吸をしている。背中に大きな貝殻を持つのがカタツムリで、貝が退化してなくなったものを総称してナメクジ類という。

 這って移動するカタツムリには、長距離移動は難しい。狭い地域内で繁殖活動が行われるためか、地域ごとに種が分かれ、日本だけでも800種ほどのカタツムリが生息している。ミスジマイマイもそのひとつで、関東地方を中心によく見られる。

 カタツムリの殻は外敵からの防御や、体の水分蒸発を防ぐ役割をしているが、殻を作る負担もある。ナメクジは、殻に投資するエネルギーを温存し、身軽により有利に生存しようとカタツムリから進化した生物だ。「どちらが有利かは生息環境にもよるので一概には言えませんよ」と、カタツムリの進化が専門の東京大学理学部の上島励准教授は言う。

 ナメクジ類には多くの科や属があり、それぞれのグループごとに祖先となるカタツムリが異なるため、一口にナメクジといってもその起源は多様だ。右絵のナメクジは、日本在来のナメクジ科の一種で、その祖先であるカタツムリのグループは特定できていない。「内臓の構造から見てもミスジマイマイとナメクジは近縁ではない」と、上島先生。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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