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サイエンス読み物

似姿違質「アヤメ VS カキツバタ」

Science Window 2008年05月号(2008年、2巻2号 通巻14号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 「いずれアヤメかカキツバタ」。どちらも美しく、優劣つけがたいときに使われる表現だが、これにノハナショウブ(ハナショウブの原種)が加わると見分けはいっそう難しくなる。いずれもアヤメ科アヤメ属の多年草で、日本各地に自生し、初夏を彩る。早い所で5月ごろから花を咲かせるのがアヤメとカキツバタで、ノハナショウブはこれより一足遅れて湿原などに咲く。ちなみに端午の節句の菖蒲湯に入れるのは、ハナショウブではなく、たくさんの小さな花を棒状に咲かせるサトイモ科のショウブという植物の葉だ。

 カキツバタ(杜若)の和名は、書付(かきつけ)花が転じたもので、この花の汁を布にすりつけて染めたことに由来する。一方アヤメ(菖蒲)は「文目」とも書き、花弁の網目模様が由来ともいわれている。見分けるポイントは、生育地、葉の色と幅の広さ、そして花。アヤメは花弁(外花被片)に紫と黄色の模様があり、カキツバタは中央に白い筋がある。花が咲く高さは、アヤメは葉より高く、カキツバタは葉と同じくらいかそれより低い。

 どちらも虫媒花で、マルハナバチなどのハチの仲間が花粉を運ぶ。「これらの昆虫に対して合理的な花の作りが独特な美しさを醸し出し、人の目も楽しませていますね」と、箱根湿生花園学芸員の高橋孝三さんは話す。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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