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サイエンス読み物

似姿違質「メジロ VS ウグイス」

Science Window 2008年03月号(2008年、1巻12号 通巻12号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 鮮やかな抹茶色の鳥が梅の木で、盛んに花の蜜を吸っている。梅の花が満開になる2月下旬ごろから、本州の各地で見かける情景である。古来より親しまれてきた早春の組み合わせ“梅に鶯”だけに、「ウグイスだ!」と叫んでしまいそうだが、よく見ると目の周りに白い羽毛の縁取りがある。これはウグイスではなくメジロで、目の特徴が名前の由来になっている。

 一方、ホーホケキョのさえずりが聞こえてくるのもこの季節。雑木林や人家の庭木で目にしやすいメジロに比べ、ウグイスは人があまり踏み込めない笹薮などをより好む。声はすれども姿を見るのは難しい。色は緑がかった渋い銀茶色で、これが本来の“鶯色”。
 どちらも東アジアの鳥で、北のものは渡りもするが、本州には1年中生息している。食物が豊富になる早春から徐々に縄張りを意識し始めて、巣を作り、繁殖活動に入る。そのサインのひとつがさえずりで、声の主はオス。「メスへのアピールと、縄張りを主張しているんですよ」と話すのは、ウグイスの分類を研究している梶田学さん。

「どちらも雑食で昆虫や果実などを食べますが、メジロの舌はブラシ状で、蜜をなめやすいんです」

 ウグイスも梅の木に止まることがあるという。春先の梅の木に小鳥を見かけたら、まず目の周りを観察しよう。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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