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サイエンス読み物

似姿違質「ヤマネ VS ヒメネズミ」

Science Window 2008年01月号(2007年、1巻10号 通巻10号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 十二支の先頭を飾る「子(ねずみ)」。とはいえネズミと言うと、ドブネズミやクマネズミなどの家ねずみ類が連想され、人に好まれる動物ではないようだ。だが森や山林では、人間に依存せずにけなげに生きる野ねずみの仲間たちが暮らしている。

 ニホンヤマネは体長8センチほどの齧歯(げっし)目ヤマネ科の哺乳類。本州、四国、九州の山林に生息する日本の固有種で、背中に引かれた一本の黒い縞(しま)が目印になる。「やまねミュージアム」館長の湊秋作先生は「ヤマネは漢字で『冬眠鼠』とも書き、多くの野ねずみ類とは違い、冬眠する性質を持つ動物です」と話す。木登りが得意で、樹の上でチョウやガ、トンボなどの小型昆虫を捕食し、アケビやヤマブドウなどの低木の果実も好む。

 一方ヒメネズミは、齧歯目ネズミ科に属し、ヤマネと生活圏はほぼ重なるが個体数は比較的多い。木登りも得意だが根や茎や落ちた木の実なども食べ、地下に潜って食料を貯蔵することもある。冬場の食料確保が可能なため、冬眠の必要がないと考えられている。
 どちらも森の貴重な生き物だが、ヤマネは準絶滅危惧種に指定されている。「森林破壊や道路による山の分断は、森の生物の生息環境を悪化させます。特にヤマネは今では人間が保護していかなければならない動物だと思います」と湊先生。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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