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サイエンス読み物

似姿違質「ズワイガニ VS タラバガニ」

Science Window 2007年12月号(2007年、1巻9号 通巻9号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 日本海産のズワイガニ(楚蟹)と北海産のタラバガニ(鱈場蟹)、どちらもゆでれば朱赤に変わり、甘味のある味わいがこたえられない。冬場に漁が解禁されるので、冬の味覚の代表と思われがちだが夏に食べても実はうまい。

 ズワイガニにはカニ肉のタンパク質の中のアミノ酸成分に、数種のうま味成分がバランスよく含まれ、品のある味わいが好まれる。鳥取では松葉ガニ、福井では越前ガニと呼ばれ、オスを指す。メスはセイコガニなどと呼ばれ、オスと異なり小柄で他種のようにも見える。

 一方、歩脚を広げると1メートル以上になり、カニの王様と呼ばれるタラバガニは、実はカニではなくヤドカリ類。カニであれば脚ははさみと合わせて10本のはずだが、8本しか見当たらない。実際にはもう1対短い脚が隠れている。可食部は、カニ類よりもカルシウムと糖質が多く、コクのある甘味が感じられる。和名は鱈(たら)の漁場の深海に生息することから付けられた。

 タラバガニがヤドカリ類だと言えるのは、「タラバのメスは、巻き貝に入っていた名残なのか腹部が右側にねじれ、その左側だけに小さな脚が付いています。左右対称ではないんですね。また、オスにはカニ類にある交尾器がないんですよ」と、国立科学博物館名誉研究員の武田正倫先生は話す。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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