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サイエンス読み物

似姿違質「イルカ VS サメ」

Science Window 2007年09月号(2007年、1巻6号 通巻6号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 イルカとサメの違いは? どちらも大海原を泳ぐ脊椎(せきつい)動物だが、イルカは哺乳類、サメは魚類で全く異なる類に属する。「魚類が地球上に発生したのは5億年ほど昔で、サメの祖先は4億年ほど前に海に出現したといわれます。その後、魚類の一部から両生類が生まれ、陸上で暮らし始めました。やがてその一部が爬虫(はちゅう)類に、さらにその一部が哺乳類に進化し、今から6千年くらい前にもう一度海に戻った仲間が現在のイルカたちです」と国立科学博物館の山田格先生。では、イルカとクジラの違いは? かわいいのがイルカ、大きいのがクジラなどと見る、人の感じ方の違いにすぎず、ともに哺乳類。生物学的な違いはないと言う。

 魚類と哺乳類の大きな違いは、呼吸法と生殖法。魚類のサメはエラ呼吸で水中から酸素を取り入れ、炭酸ガスを放出する。哺乳類のイルカは海面に出て呼吸をする。噴気孔を開けて息を吐き、存分に空気を取り込み、孔を閉じる。生殖法は、サメは卵生か胎生で2〜数十の卵や子どもを産み、子育てはしない。イルカは通常1回の出産で1頭を産み、母乳で育てる。

 進化の過程は異なりながらも、両者の姿はどことなく似ている。「生息環境や餌が似ている両者にとって、このような姿形が速く泳ぐのに適しているからでしょう」

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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