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サイエンス読み物

似姿違質「ハス VS スイレン」

Science Window 2007年07月号(2007年、1巻4号 通巻4号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 水辺に美しい花を咲かせるハスとスイレンは、どちらも沼や池などに生える水生の多年草。品種改良が盛んに行われ、観賞用の園芸植物としても親しまれている。

 かつては、ハスもスイレン科に含まれていたが、現在はハス科ハス属として分類される。生態や生育場所に共通点が多く混同されやすいが、花や葉の位置や形、大きさからその違いは一目瞭然。さらに、ハスの葉には高い撥水(はっすい)性(水をはじく性質)があり、水がかかると水玉をつくるが、スイレンの葉はあまり水をはじかない。ハスは、地下茎に空気を通す孔があいているが、スイレンの地下茎には孔がないなど、さまざまな違いがある。

 スイレンが「睡蓮」と表記されるのは、花が午前中に咲いて夕方に閉じる活動を数日間繰り返す(熱帯スイレンには夜咲きがある)、つまり夜間は眠っているように見えるためといわれる。ヒツジグサは、花の見ごろが「未(ひつじ)の刻(午後2時ころ)」であるところからこの名がついたとされる。夜間に花を閉じるのはハスも同様だが、ハスの方が一般に“早起き”。
 ちなみに、ハスは開花のときにポンと音がするといわれるが、「開花直前の蕾を押すと空気が漏れるので、構造的にあり得ません」と大阪市にある植物園「咲くやこの花館」の山本和喜さんは言う。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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