レベル
:
サイエンス読み物
似姿違質「ゲンジボタル VS ヘイケボタル」
掲載日
2024.06.01
幻想的な光を放つのは、オスとメスが出会うため。オスは交尾後数日で、メスは産卵を終えると数日後に死んでしまうというはかない命だ。世界では2000種余り、日本には約46種いるというホタルの代表は、ゲンジボタルとヘイケボタル。どちらも水生昆虫で、約9カ月間を水中で過ごす。その後、幼虫は上陸してサナギになり、約40日間で成虫になり、ゲンジは6月中旬頃、ヘイケは7月中旬に飛翔する。
ゲンジの体長はヘイケのほぼ2倍。発光も控えめなヘイケに比べゲンジは数倍明るいことからか、平家を滅ぼした源氏に由来して、その名がついたと言われている。生態的には、ゲンジの幼虫は主にカワニナを食べて育ち、流れのある河川でないと呼吸ができない。ヘイケの幼虫はタニシやモノアラガイも食べ、流れの少ない水田や湖沼でも生きられるというように、人間の生活空間にも適応力がある。「減少の一途をたどるホタルですが、より心配なのはヘイケボタル。ヘイケは人間の生活圏に近づいているために、人里の環境悪化とともに絶滅が危惧されます」と板橋区ホタル飼育施設長の阿部宣男先生は懸念する。
控えめながらも生きる術を確立してきたヘイケボタルだが、現代人にも滅ぼされてゆくのだろうか。
【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。
関連リンク
- Webマガジン|Science Window2007年06月号「特集 微生物がつくるおいしさ」
一覧に戻る