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サイエンス読み物

似姿違質「在来種カントウタンポポ VS 外来種セイヨウタンポポ」

Science Window 2007年04月号(2007年、1巻1号 通巻1号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 在来のタンポポは、カントウタンポポなど十数種ある。生粋の在来種が見られるのは、農村部や都市の日本庭園などに限られてきている。外来種のセイヨウタンポポは、明治初期にヨーロッパから野菜として持ち込まれたといわれており、現在は北海道などに分布するだけ。本州以南の大都市で見られる多くは、外来種と在来種との雑種だ。

 都会の空き地や路地を好むセイヨウタンポポは、一年中葉をつけている。一方、カントウタンポポは人の手が届きにくい草むらなどに生え、他の草花が生い茂る夏には地上部分を枯らす。カントウタンポポは虫に花粉を運んでもらって受精するが、セイヨウタンポポは、花粉の受精能力が少なく、未受精のまま卵細胞が分裂して種子になる単為生殖をする。つまり、母親が自分のコピーを作って繁殖するのだ。

 両者は生態が異なるため、外来種が在来種の生育地に侵入してとって代わることはない。見分け方は、花を包む緑の部分〔 総苞片(そうほうへん)〕が上を向いているのが在来種で、垂れ下がっているのが外来種。

 東京学芸大学教育学部の小川潔・助教授は「外来種が増えた理由は、一つは日本の風土に合った在来種の遺伝子を取り込んで雑種化したこと、もう一つは人間が結果的に外来種の生育しやすい環境を作ったからでしょう」と話す。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

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