レベル
サイエンス読み物

似姿遺質 「原種イノシシ VS 家畜ブタ」

Science Window 2007年01月号(2007年、創刊準備号、2ページ)より再掲
掲載日
2024.06.01

 ブタはイノシシの子孫である。イノシシは、世界各地で今なお見られる野生獣。日本から欧州まで広く分布するユーラシアイノシシが家畜化されてブタは生まれた。なかでもチベットブタ(蔵豚)は比較的イノシシに近い姿を残している。

 古くからイノシシは食肉目的で人間に狩猟されてきた。一方で食べ物や家族単位、体のサイズなどが人に近く、人の居住地と結びついた生活に進んで順応する特性があった。そんなイノシシを人が飼い馴らそうと考えたのは自然なことだ。飼い馴らした何匹かのイノシシの中で、人間が好む特性を持つものを選び出し、交配を繰り返したその結果、ブタが誕生した。人間は、攻撃性より穏やかな気性を、また、筋肉質の硬い肉より脂ののった軟らかい肉を、そして一度にたくさんの子を産む種を求め、家畜種ブタは確立されていったのだ。

 国立民族学博物館の野林厚志助教授は、「ブタは7〜8千年前から存在し、ほかの家畜と比べても古い方です。その特徴は何といっても原種のイノシシが現存すること。例えば身近な家畜種『羊』『牛』『山羊(やぎ)』『馬』の原種は、現存していません」と話す。

 【似姿違質(じしいしつ)】は創作四字熟語。「スガタはにれどもシツたがう」と読んでいただいてもかまいません。姿形が似通っていても分類上、または進化の過程が違うもの、人間にとっての好・不都合など、異なる価値を持つ2つの生物を対比してお見せしています。

関連リンク

一覧に戻る