【コラム】校外にも学びはたくさん 防災と私たちの暮らし
足を運ぶことで得られる校外での学び。災害大国の日本に住む私たちには不可欠な「防災」にまつわる学習の場を紹介する。
がまだすドーム(長崎県島原市)
長崎県の島原半島にある雲仙岳は活火山で、近年では1990年11月から95年2月まで断続的に噴火が続いた。特に91年6月の大規模火砕流では死者も出た。がまだすドーム(雲仙岳災害記念館)の「がまだす」とは地元の方言で「頑張る」という意味。「復興に向けて頑張ろう」との力強い思いが込められている。雲仙岳をめぐる災害の歴史を知ろうと年間約10万人が来館する。
常設展示はジオラマへのプロジェクションマッピング、約13分の再現映像を流す平成大噴火シアター、島原大変劇場という紙芝居コーナー、火山に関するクイズコーナー、遠隔操作でブルドーザー等を動かして土石を片付ける模擬体験コーナーなどがある。
平成大噴火シアターは40人超の死者を出した火砕流の恐ろしさや、当時の消防団や住民の動き、復興の様子を動画で見られる。平成の噴火はテレビ放映されたので保護者の世代ではなじみがあるが、若い世代に向けて分かりやすく伝わる動画を作成した。
島原大変劇場は江戸時代に起こった災害を紙芝居風に伝える。この噴火は「島原大変 肥後迷惑」という言葉を生んだ。島原は雲仙岳がある付近で、肥後は現在の熊本県を指す。島原半島と熊本県は有明海を挟んで対岸にあり、大地震によって眉山が崩れ落ちて城下町を襲い、有明海に大量の土砂が流れこむことにより津波が熊本県側に押し寄せた。この一連の災害で死者は1万5000人にのぼった。災害は悲惨なものだったが、かわいらしい絵で描き、幅広い層に見てもらえるように工夫している。
クイズコーナーは難易度別に分けられている。「マグマの粘りが高くて噴煙も多いブルカノ式噴火。日本の火山で有名なのはどこ? (1)浅間山 (2)高見山 (3)山本山」といった問題も出される。(正解は末尾に)
学習用に解説冊子(1冊220円)も館内で販売し、火山とその災害について学びながら、防災意識を高められる。福岡のほか、熊本からの来館者も多い。長崎市内から車で1時間半、福岡・熊本からは船で来館できる。(クイズの正解は(1))
がまだすドーム(雲仙岳災害記念館)
長崎県島原市平成町1-1
常設展示入場料 大人1050円 中高生740円 小学生530円
午前9時~午後6時(最終入館午後5時)
年中無休
0957・65・5555
東日本大震災津波伝承館(岩手県陸前高田市)
岩手県陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園の一角に位置し、年間約20万人が国内外から訪れる。津波に耐えて残った松の木のモニュメント『奇跡の一本松』から歩いて10~15分の場所にある。館内は1.歴史をひもとく、2.事実を知る、3.教訓を学ぶ、4.復興を共に進める、という4つのゾーンに分かれている。県営の施設であり、被害の大きかった沿岸部の陸前高田市のみならず、県内の被災状況や内陸部からの支援状況なども分かる。
来館者の関心が高いのは「命を守り、海と大地と共に生きる」がテーマのガイダンスシアターと、発災当時に何があったかを映像やデータで紹介する3.11シアターだ。沿岸の山田町から採取した約6000年分の地層の標本が展示されている。これを見れば三陸地域に多くの津波が押し寄せてきたことが分かる。
津波で被災し大破した消防車、大きく折れ曲がった鉄の橋げたの一部、泥にまみれたバレーボールや鍵盤ハーモニカといった実物を展示する。
ほかにも発災当時に東北地方整備局災害対策室で実際に活用された設備の移設展示や、自衛隊などが行った多様な救助・支援活動についての展示などがある。
三陸地域には昔から「津波てんでんこ」という教えがある。「津波が来たら、周りを気にせず、てんでんばらばらに、それぞれで逃げなさい」という意味で、「必ず生き残れ」という強い思いが込められている。館内では、「津波てんでんこ」をはじめ様々な教訓を学ぶことができる。
東日本大震災後は各地に震災の伝承施設ができたが、その中でも東日本大震災津波伝承館には多くの人が来館する。岩手県は「震災の事実や教訓を自分自身に置き換えてとらえるきっかけとしてほしい。また、ここだけでなく三陸地域の様々な場所にも足を運んでほしい」としている。館内には解説員が常駐しており、展示品の説明を受けられる。
東日本大震災津波伝承館(いわてTSUNAMIメモリアル)
岩手県陸前高田市気仙町字土手影180
入館料無料
午前9時~午後5時(最終入館午後4時半)
休館日は12月29日~1月3日(臨時休館日あり)
0192・47・4455